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オシャレなお店に服を買いに行きたいけど、そもそも服を買いに行く時に着ていく服がない。
言葉遊びのように捉えられそうなところがあるが、これは切実な問題のひとつだ。
これからおしゃれなお店に服を買いに行くのに、オレの服装ってダサくね・・・
服装がダサい
→ おしゃれな店員に見下される
→ お店にいるおしゃれなお客にも見下される
→ おしゃれな服を買いに行くのを諦める
→ 行動できない自分が嫌になる
あなたの心理状態はこんな風になってるんではなかろうか。
これぞまさに負のスパイラルと言える。
でも、自分を卑下する前にまずそこに気が付いた自分を褒めてあげよう。
そう、今のあなたはダサいのだ、いやダサくないのかもしれない。
正確に言えばまだ知識が少ないのでダサいのか、おしゃれなのか判断が出来ない状態というのが一番適切な回答だと思う。
おしゃれになりたいメンズが一番初めにぶち当たるであろう大きな壁、ここで振るい落とされてしまう人がなんと多いことか・・・
今回紹介させていただくのは、おしゃれになりたいメンズの誰しもが通る、おしゃれなお店に服を買いに行く時の対処法について。
私の経験を踏まえながら紹介させていただこう。
はじめてセレクトショップに服を買いに行く
私がメンズファッションにどっぷりハマるキッカケが何かと言えば、あるドイツブランドの一足のブーツに出逢ってからだった。
実家のケーブルテレビで放送されていた、ミラノかどこかのショーでモデルが履いていた一足が私の心を鷲掴みにした。
1990年代も中盤に差し掛かる頃なので、当然インターネットなんて便利なものは存在しない。
幸いブランド名だけはメモっていたので、直ぐに近所の本屋に置いてある雑誌を片っ端から買って帰ることにした。
どこの店で売ってるかを調べるためだ。
確か、メンズノンノかチェックメイトだったと思うが、ファッションスナップコーナーでそのブーツを履いてる奴がいた。
それがロイヤルフラッシュというお店で買っていた事が分かった。
価格は分からないが、雰囲気的に高そうなことを察知した私は、財布にある全財産だった2万円を握りしめお店に向かうことにした。
お店は渋谷と原宿の間にあったが、店前に着くなりその場違いな雰囲気に圧倒された。
この時はじめて服を買いに行くための服が必要なのだと気が付いた。
だが、時すでに遅し。
間違いなく自分はこの場所にいてはいけないと思えるほどダサ過ぎる格好だったし、Budweiser(バドワイザー)の財布に入っている2万円という予算は、明らかに心許ない金額だった。
店の前に着いたというのに、一向にお店の中に入る事が出来ない・・・
気付けば店前を一時間以上ウロついている自分がいた。
2,000円で買った古着のコーデュロイパンツに、どこのブランドだか分からない古着のネルシャツというコーディネートは、このお店の雰囲気とは明らかに違う。
場違い過ぎる自分の格好に嫌気が指す。
服を買いに行くにも、そのお店に行くための服が必要になるのか?
ただ単純に恥ずかしかった・・・
こんな格好で店に入ったら何て思われるだろう?
もう帰ろう。。。
色々考えてしまうことに疲れた私は、もうこの場から立ち去りたい思いでいっぱいだった。
駅に向かって歩みを進める中、なんだか心の片隅でモヤモヤと晴れないシコリのような引っかかりが残る。
そもそもあのテレビで見たブーツはいくらだったのか?
ていうか、あのブーツは本当にこの店で売ってるのか?
結局、頭の中で考えてしまうのは、あのTVで一瞬だけ映っていたブーツのことばかり。
考え疲れた私は、どうでもいいや状態に突入していた。
「聞くは一時の恥、聞かざるは一生の恥」
なんて素晴らしい格言だろう。
勢いを盛り返した私は、『服を買いに行くための服なんて必要ない!』、そう自分に言い聞かせそのままお店に突入していった。
入ってみると外から見るのと違い、全くの別世界。
ドルチェ&ガッバーナ
ドリス ヴァン ノッテン
ジョー ケイスリー ヘイフォード
ロイヤルフラッシュは、世界各国のインポートブランドを取り揃えるハイモードなセレクトショップだった。
当時を彩るハイブランドが並ぶ店内は絢爛豪華な空間として異彩を放っていた。
展示されている商品はどれも神々しく、私ごときが手に取ることは許されないモノに見えた。
見るからに高そうな革ジャケットの値札を恐る恐る見てみると
\280.000
やっぱり帰ろう。。。
やっとのことでお店に入ったのも束の間、完全に戦意喪失状態の私は産まれたての子羊の如く、ガクガクブルブルと出口に向かって歩くのがやっと。
一刻も早くこの場から立ち去ろうとした瞬間・・・
セレクトショップの店員に声掛けされる
『なんか探してるのあんの?』
横から唐突に声が聞こえてきた。
振り返るとお店のスタッフらしい人が立っている。
内心やけにフランクな奴だと思いながらも、さすがセレクトショップの店員だけにお洒落感が半端なかった。
とりあえずブランド名とブーツの特徴を伝え、お店に置いてあるかを聞いてみる。
どうやら人気があるモデルらしく、今は在庫をきらしているらしい。次回入荷は翌月で、今なら予約する事も可能だと教えてくれた。
お店にラインナップされている一冊のカタログを見せてもらい、その中に気にいるモデルがあれば取り置きしてくれると。
この分厚いカタログにはこのブランドのブーツだけではなく、今期お店として取り扱う商品の全てが網羅されているものだった。
価格はどのモデルも5万円がベースになるようで、当然財布にある予算2万円で買えるようなモデルは一つとして置かれていなかった。
予算が足りないとはいえ、この時点で購入することは決めていた。完全にこのブーツに惚れてしまったのである。
私を接客してくれたこの店の店員は、私がファッション初心者だと始めから分かっていたのだろう。
異様にフランクではあったものの、洋服についての知識は申し分ないし、分からない事は詳細まで教えてくれたので個人的に嫌だと感じることは無かった。
場違いな恥ずかしさでこの場を去りたいと思っている自分に対し、声をかけてくれたのは純粋に救われる行為になったわけだし。
例えそれが本心として私をカモ扱いした行為だったにせよ、今思えばあの空間でシカトされた状態でウロウロしてる事の方が恐ろしい。
私はそのままワンワンと店員に促がされ一ヶ月後の入荷を待つことにした。
それから約一ヶ月後、私の人生を変える一足のブーツを手に入れる事になるのである。
セレクトショップで服を買う経験を通して感じたこと
私はこの体験を通して学んだことがいくつかあった。
それは、実際に自分の目で物(服)を見ることの重要性と、意外にお店に入ってしまえば自分の格好なんてどうだったか忘れてしまったことだ。
実際にものを見なければディティールまで分からない。
使われている素材、生地感(厚み)、色味等、ある程度経験を経ないと蓄積されない情報なため、初めはお店で実際に自分の手にとって見ないと比較ができない。
様々なブランドの洋服を実際に目の前で見る、触れる、実際に着るという経験をすることで肌感覚として自分の中に経験が蓄積される。
この蓄積があるからこそ「コスパが良い」「コスパが悪い」という判断が出来るようになるわけだ。
意外だったのは、お店に入る前はあんなに気にしていた自分の服装について気にならなくなっていたこと。
正確には店員に助けられたわけだがどこのセレクトショップの店員も、相当な挙動不審な行動をしてなければ大概は声を掛けてくれる。
ファーストインプレッションでこの店員は私をダサい奴と判断したかもしれない。
いやしてただろう。
でも、話しているうちに取扱いしているブーツが本当に欲しいんだという私の心情に触れ、助けてやろうと思ったのかもしれない。
そもそも、自分が働く店の取扱いしているブランドもしくは自社PB商品を欲しいと言ってくれるお客に対して、「あいつダサいな」で終わることなんてあるのかね?
私が店員だったら素直に嬉しいし、たとえ格好がダサ過ぎたとしても何とかおしゃれにしてやろうという気になることの方が大きいようにも思う。
しかも、服を買いに行く服がないという経験はこの一回で終わりだ。
まずはユニクロで無難な服を買ってから着ていくのが良いみたいな意見を聞くが、そんな服を買いに行くための服にお金を使うなんてドブに捨てるようなもの。
そんなことはせずに、自分が望む服を買うことに集中することをおすすめする。
そんな取ってつけた服を着たところで見る人からみれば普段のダサい格好の時と対して違いなんて感じないし、お金の無駄。
そのお金を好きな服を買う予算に充てた方がよっぽど有効で無駄がない。
まとめ
人間は何か新しいことを始めようとした時にこのような心理的抵抗が必ず働くことをまず理解しておこう。
それは自分のコンフォートゾーンから未知の一歩を踏み出す際に必ず起こる生理的な防衛反応の一つに過ぎない。
この現象は別に洋服に限った話じゃないし、新しいことを始めようと思ったら何にでも共通して起こる現象。
私はこの『セレクトショップで1足のブーツを買う』という経験がスイッチとなり、これ以降メンズファッションにのめり込んでいくわけだが・・・
この経験をすることが、今までの自分の価値観にどれだけの変化を起こすことになるかを体感してほしい。
始めに入った店がハイモードなお店だったこともあり、これ以降私はどんなセレクトショップ、ブランドショップに行こうが緊張することは無くなった。
今じゃ短パン・Tシャツにサンダルなんて格好でも問題ない。
はっきり言ってしまえば、周りのことを気にし過ぎているのは自分だけで誰もあなたのことなんて目に入ってない。
言っちゃった・・・
服を買いに行く服がない・・・そんなことを気にするよりも『自分が本当に欲しい服を買いに行くこと』に意識を集中してほしい。
でもおしゃれなお店に行ける程度は揃えたい
ただ、ここまで言っても服を買いに行く服にこだわる人がいるのだとすれば、下記コスパの良いお店で適当に見繕うことはできる。